免許取りたての友人に言われた。「四輪乗って思った。二輪は危ない」と。曰く「左折しようとしてるのに左から抜いてくる」。そんなやつは二輪乗っても四輪乗っても無茶な運転をするもんだ。
二輪が危ないとかいう議論はよくあるが,少なくとも運転の危なさの面で言えば,「二輪⇒危ない」という因果関係を想定するよりも,「もともと危ないやつが二輪に乗る確率が高い」と考えるべきではないか。
1つめの仮説は,一般に二輪に乗るのは若者が多いということ。これは二輪にかかるコストが四輪よりもかなり安いということから,若い学生でも乗ることができるため,ある程度妥当な説だと思われる。若者の運転が全体の平均より危険であるということは,そのへんに敏感な保険会社の保険料がよく示している。つまり,「若者の運転は危ない」という因果関係が,「二輪の運転は危ない」にすりかわっているのだ。
2つめの仮説は,原付免許の存在。原付免許は実技なしで取得できるため,二輪の特性を知らずとも運転することができる。しかも自転車の延長線上に考えてしまいがちであるため,免許が必要な乗り物としては最も交通マナーが悪いと考えられる。さらに,二輪の中では原付が最も数が多い。
四輪しか乗らないドライバーは,原付とそれ以外の車輌法上,道路交通法上の区別がつかないことが多い(注1)。つまり,原付を他のすべての二輪と同列に扱う傾向がある。これが原付が最も数多いことと相まって,「二輪は危ない」という結論となる。実際は「原付が危ない」という範囲にとどまるべきものであると考える。
以上2つの仮説に加え,二輪が悪者にされる理由として,四輪ドライバーにとって二輪は非難しやすい存在であるという仮説を提出したい。
四輪に乗っているときに,他の四輪が危ない運転をしたとする。そのときに運転者は,その危ない運転を「四輪」のせいにはせずに,危ない運転をした運転者のせいにするだろう。なぜなら自分も四輪に乗っているからである。四輪が危ない乗り物だとすると,自分の行動と矛盾する。逆に,二輪が危ない運転をすると,二輪のせいにできる。二輪自体を非難しても,自分の行動と何ら矛盾しない。
二輪を非難する四輪ドライバーの思想の根底には「自分にとって邪魔」という考え方があるように思う。思うだけならいいが,二輪に乗っている者の前で合理的な説明なしに非難するのは勘弁してほしい。法で認められているものを法に従って乗っている限り,それは個人の自由だ。そんなもんこっちに言わせれば,バカデカい車に1人しか乗ってない方が,無駄なスペースを使うため渋滞の原因になって邪魔だ。お互いに「邪魔」と言い合うのがいかに意味のない議論か。道路は自分のためだけにあるんじゃない。
最後に。二輪それ自体が本当に危ない乗り物であるならば,「白バイ」というものは存在しないはずである。
注1:これは統計的なデータを根拠にしていない。筆者の経験による。